知財自在

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企業知財部に関する疑問・悩み相談② 「できる」知財部はどう見分けたらいいか?

 皆さん、こんにちは。

 私は、ブログの書き方を変えて2記事目の、企業に勤務する弁理士です(笑)。

 

 さて前回予告しました通り、今後は企業知財に関する疑問・悩みに相談する形で記事を書いていきたいと思っています。

 2回目の今日のお題は、”「できる」知財部はどう見分けたらいいか?”、です。

 

 最近、あるご縁があって、理工系の修士過程に通う学生さんと話をする機会がありました。彼は、理工系には珍しく(?)知財に興味があり、できれば新卒から知財部に行きたいとの希望を持っていました。本日のお題は、彼と話をした際に出た質問のうちの1つです。

 つまり、せっかく新卒時代という大事な時期を過ごすんだから、知財部に行くなら自分の実力が大きくアップする、「できる」知財部に行きたい、と考えての質問だったんでしょう。

 一介の中年知財部員としては、知財に興味を持ってくれて嬉しい反面、何やら複雑な心持ちでした(笑)。まあ、それはさておき、私がその時、彼に回答した内容をご紹介したいと思います。

 

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 見るべきポイントは以下の3つと思っています。

 

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をみる企業

 

 順番に説明します。

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

 知財関係者にとっては自明の話ですが、特許出願等は必ず弁理士に依頼しないといけないかと言うとそんなことはありません。弁理士は代理人に過ぎないので、代理人を立てずに発明者自らが出願することももちろん可能です。この場合、代理人がいないので、願書には【代理人】の欄はありません(ちなみに特許出願等の願書をどこで調べればいいかについては本記事では詳細は述べませんが、WebでJ-PlatPatなどを使えば調べることができます)。

 そうすると、ある企業の特許出願の願書をいくつか見たとき、それらに【代理人】の記載がないとはどう言うことでしょうか?、そう、その企業が代理人を立ててない、つまり社内で出願書類を作成していると言うことです(もちろん一部は特許事務所等に依頼して、一部は社内で作成する方針の企業も多くあります)。

 このようなスタイルを”明細書の内製”と言います。そして内製している会社は、客観的に正しいか否かは別として、自社の知財活動に自信を持っている企業が多いです。すなわち、「事業内容やその技術をあまり分かっていない事務所なんかに任せられない。俺たちでやる」と言う意気込みで自社で出願書類を作成し、権利化のための中間処理などにも対応していると思われます。よってこのような企業は「できる」知財部を有する、と言える可能性があります。

 

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

 これも1.と同様、内製している企業を確認するためのものです。願書の【代理人】欄に記載の弁理士の指名を、「弁理士ナビ」等で調べて、当該弁理士の所属を確認して見てください。

 確認した勤務先が出願人の企業である場合、すなわち自社の社内弁理士を【代理人】欄に記載している場合も、1.と同様、内製している企業である可能性が高いです。1.の場合は発明者自らが明細書を書いているような企業に多く、2.の場合は、知財部が明細書を作成している場合が多いと推定しますが、いずれにせよ事務所に外注せず自社で進めていることに変わりはありません。

 よって1.と同様、これらの企業も「できる」知財部を有していると思われます。

 

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をきく企業

 以前の記事(転職を考えている知財部員が候補企業を見る際のポイント - 知財自在)

にも書きましたが、係争の経験、すなわち防御側として警告状が届いたので非侵害主張を検討した、また他社の問題特許の無害化のため異議申立や無効理由を検討した、あるいは攻撃側として自社特許に基づく侵害主張ができそうな企業を探したり、実際に警告状を送付・ライセンス交渉をした、と言った経験は、企業の知財部員の実力を大きく向上させます。

 よって過去に新聞等で取り上げられた知財関連紛争で名前をきく企業の知財部は、相当の実力を備えている可能性が高いです。

 

 上記の1.〜3.はいずれも外部から確認できる情報のみを元に、「できる」知財部かどうかを確認可能な手段となります。新卒の方で知財部への配属を希望されている方はもちろん、転職希望の方なども、ぜひ上記のポイントでチェックしてもらえればと思います。

 

 改めまして本日のまとめを以下に示します。

 

<本日のまとめ>

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をきく企業

 

 本日は、以上です。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

企業知財部に関する疑問・悩み相談① 事業部経験は知財部で活きるか?

ご無沙汰しております。

 

私は、ブログ更新が約1年半振りとなってしまった、企業知財部の弁理士です(笑)。

 

前回から随分時間が空いてしまったのをいいことに、今回から体裁を少し変えてみようと思います。具体的には、これからは企業知財部に関連する様々な疑問・悩みに答える形で、記事を書いていくつもりです。

 

2社目の知財部の中年管理職ともなると、日々、若手社員、他社から転職してきた社員、他の部署からの異動希望者などの疑問・悩みを聞くようになるものです。今回、記事の書き方を変えようと思ったのは、そのような疑問・悩みや、それに対する私の回答が、他の知財関係者の方の役に立つかも、と思ったからです。

 

以上のような前提で、栄えある第1回のお題は、記事タイトルの通り以下となります。

”事業部経験は知財部で活きるか?”

 

これは、当時、事業部の設計部門にいた知り合いから質問を受けたものです。彼は、事業部門の仕事のハードさに嫌気がさし、知財部に移りたいと考えていました。とは言うものの、すでに30代半ばだったので、新しい部署でやっていくにあたって、これまでの業務でやってきた内容が活かせるのかどうかを確認したくて、私に質問してきたのです。

 

結論を先に言いますと、この質問への回答は明確に”イエス”です。

私が認識している事業部出身者の強みは以下の3つです。

 

1.コスト意識

2.期日の厳守

3.スピード感

 

これらがなぜ企業知財部の業務に活かせるのか、順番に説明します。

 

1.コスト意識

 モノづくりをしているメーカーの事業部などでは、常にコスト削減圧力にされされています。下手をすると、1円単位の削減を頑張る場合もあります。それくらい費用対効果にうるさく、このような意識を当然にメンバーにも求めます。

 よって事業部出身の知財部員は、値下げ交渉や、よりコストパフォーマンスが高い事務所を選定するなどの意欲・スキルに長けていると思われます。元々、知財部には研究所出身者が多く、コスト管理が緩い雰囲気があるので、事業部出身者のこのような意識は重宝されます。

 

2.期日の厳守

 知財業界は法定期限があるので、もともと期日には厳格なイメージがあると思います。しかし、これはあくまで事務所の話。企業知財部で事務所に外注しているところは案外ルーズなところがあるのではないでしょうか?

 この点も、事業部出身者は、自分が発注を受ける方の立場、つまり相手がお客さんの立場である状態でずっと仕事をしてきたので、期日に対する緊張感を高く持っています。

 

3.スピード感

 2.と関連する部分もありますが、やはり事業部はスピードが早いです。お客さんへのサンプル出荷など、研究所と比べ短い周期での締め切りを抱え、しかも上述の通り、なんせ相手方は買う立場なので、自分より相手のペースに合わせなければなりません。この点もスピードが要求される一因であると言えます。

 以前、会議の場で、研究開発部門の人に対して、事業部の人が「のんびりしてるなあ」と言っているのを見たことがあります。研究開発部門と事業部が連携して問題解決に当たらないといけない状況でこの発言が適切だったかどうか?、それはともかくとして、事業部が研究所よりスピードを要求されているのは事実だと思います。

 昨今よく言われている知財部の事業貢献は、事業部との連携によって達成されることが多いと思われます。そうすると、事業部経験者のスピード感は、これら連携をスムーズに進めるために、役に立つように思われます。

 

1.〜3.の通り、事業部での経験は、研究所でのそれとはまた違った強みを知財部にもたらすと思われます。よって仮に一定の年齢が過ぎていたとしても、事業部所属の方には、今後のキャリアとして、ぜひ知財部を検討してもらえればと思います。

 

事業部出身者の知財部員の強みを改めて以下にあげます。

 

<本日のまとめ>

1.コスト意識

2.期日の厳守

3.スピード感

 

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

コロナ禍で業績が悪化しそうな企業の知財部員がやっておくべきこと

 みなさん、こんにちは。

 私は、業績悪化で数回にわたり早期退職募集があった企業で勤務していた弁理士です。

 

 ようやく全国で緊急事態宣言が解除されるなど、明るい兆しも見えてきました。一方で、「これからコロナ不況が始まる!」「40代・50代のリストラ不可避」など、景気・雇用情勢の厳しい見通しが紙面を賑わす日も少なくありません。

 実際にどの程度深刻な状況になるのかは分かりませんが、主だったエコノミストらの予測を見ても、今年度は業績が悪化する企業が多くなるのは間違いなさそうです。

 幸いなことに、現在私が勤務する会社で今期業績が悪化しているという話は聞こえてきません。しかしこのご時世、今後、前の会社のように突然、人員削減する、となる可能性も無いとは言えません。

 そこで本日は、私の過去の経験から、企業の業績が悪化した場合、知財部が直面すると思われる状況と、それを見越して知財部員がやっておくべきことについて、述べていきたいと思います。

 

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 知財部員として今からやっておきたい行動は次の3つです。

 

1.発明者との関係を強化しておく

2.他メンバーの業務内容を把握しておく

3.グループの中で浮かないようにしておく

 

 以下にその詳細を説明していきます。

1.発明者との関係を強化しておく

 実際に企業の業績が悪化してくると、知財部のような、すぐに売上・利益に直結しない業務(他社からお金を取れそうなライセンス業務は別)を主とする部署、いわゆる間接部門には、即座にコスト削減の圧力がかかります。

 具体的には、前年度と比べて減らされた予算で年度をスタートし、かつ途中で一律何%か(場合によっては何割)の更なる予算カットを迫られるなどが予想されます。

 そうなると当然、知財部としては、費用のかかる外国出願をはじめとする出願・審査請求件数の抑制、維持年金削減を目的とした既登録案件の放棄などの動きをかけざるを得なくなります。その結果、知財担当者の日常業務は、いかにして自社事業を守る、あるいは他社に権利行使できる特許を発明者と作っていくかという前向きの仕事から、どの発明案を却下するか、どの登録特許を放棄するか、というような後ろ向きの仕事にシフトしていきます。

 これはさらにどんな結果を生むでしょうか?

 企業知財部で経験のある方はわかると思いますが、当然、発明者から猛反発を食らうわけです。「なぜ俺のが放棄で、あいつのはOKなんだ?」このような問いかけに、苦しいながらも答えつつ、わずかに残った要出願案件については、当該発明者とともに権利化を進めなければなりません。

 このように、発明者に嫌なこと(自分の案件放棄など)を伝えながら、一方では発明者をその気にさせ、別案件の権利化のモチベーションを上げる、というような離れ業を成し遂げるには、普段からの発明者との良好な関係構築が不可欠です。もちろん、これらは一朝一夕にはできません。常日頃から知財担当者が提供する情報が役に立ってる、あるいは自分の発明案を大事に扱ってくれてる、などと思わせなければ、こちらが苦しい時も協力はしてくれないのです。

 よってコロナ不況がまだ表面化していない今から、前の記事(研究・開発経験のある知財部員が意識していること - 知財自在)でも書いたように、知財部員も調査などで手を動かす、発明者が出してきた進歩性が苦しい発明案をブラッシュアップして出願できる状況にもっていく、など発明者との関係を強化する行動をとる必要があります。

 

2.他メンバーの業務内容を把握しておく

 知財業界では、平時でも一定数、知財部間、あるいは知財部から事務所、またその逆などの人の移動が起こっています。

 このような人の動きは、当然、不況になるとより活発になってきます。年齢が若い方が転職には有利であるため、会社の業績が傾き出すと特に若手の知財部員から転職者が続出し、ひどい場合には毎月のように送別会が開かれるという場合もあります。その結果、別の担当者のややこしそうな案件で、自分には関係ないと思っていたものでも、当該担当者が転職することで、突然、自分が引き継がざるを得なくなる、なども起こり得ます。

 よって、業績が悪化しそうな企業の知財部員は、できるだけ周囲のメンバーの業務も把握するべきなのです。揉め事が多い発明者の案件などはうまく避け、ライセンス活用候補になっているなどキャリアアップに繋がりそうな案件は、むしろ自分が後任になれるよう、オフに勉強したり、当該案件の発明者と仲良くするなど、先回りしておくことをお勧めします。

 ベタな話ですが、海外に憧れがあった私は、通勤時や週末に英語の勉強を続けると同時に、普段から海外企業とのライセンス担当者と定期的に情報交換したり、ライセンス料率の算出方法を示した判例を読み込むなど、関連知識のインプットに努めながら、週報などアピールできそうな場で、自分がライセンス業務にも関心があり、そのための努力をしていることを匂わせていました。

 その甲斐あってと断言はできませんが、結果として前職の経営危機時には、退職ラッシュに基づく業務担当者の変更時に、希望していた海外出張を伴うライセンス業務に就くことができました。

 このようなチャンスを得るためにも、部全体の業務内容、その担当者の情報を事前に把握しておく必要があります。

 

3. グループの中で浮かないようにしておく

 いよいよ業績悪化が現実のものになり、早期退職募集などリストラが始まった場合、自分が40歳以上なら、面談に呼ばれることを覚悟すべきです。自分の会社は日本的な会社だからとか、経営者は普段からリストラしないと言っている、などは非常時には一切アテにならないと覚えておくべきです。

 事実、私が以前に在籍した会社では、社長が「うちはリストラしない」と全員の前で断言したにもかかわらず、半年もすると「断腸の思いで、早期退職募集を決断しました」にすり替わったものでした。

 では、実際に早期退職募集が始まり、肩を叩かれる知財部員とはどんな人でしょうか。特に若手社員に多く見られる間違った認識は、実力がない人、出来が悪い人がリストラされる、というものです。

 確かに圧倒的に実力がある人が首を切られることはほぼありません。しかし自分も含む、多くの知財部員は特別に優秀な知財部員ではなく、その他大勢の知財部員なのです。つまり自分では、この集団の中では俺は実力があると思っていても、それはせいぜい自分の経験してきた範囲では多少、他の人より知識があるという程度のものです。一方、冷静に考えてみると、会社にとって価値がある経験・知識で、他の人は持っているのに、自分には無いものも多くあるはずです。

 よって自分は実力のある社員であり、それのみでリストラを乗り切っていけるなどという考えは、自分に甘い思い込みに過ぎません(ただし多くの日本企業ではまだ年功が残っているので、若いから大丈夫、というのは正しい認識と思います)。繰り返しになりますが、実際には多くの知財部員の実力にはそれほど差はなく、それによって辞めてもらう人を選別する、などと言うのは現実的ではないのです。

 もしそうならば、一体何でリストラ候補が決まるのでしょうか。前の会社での経験からすると、意外にも、それは浮いているかどうか、なのです。もっと言うと、特許法や知財実務知識は相当のものを持っている人でも、普段から言動が個性的で、みんなが正しいと信じている意見と異なる考えを持っていたり、周囲を気にせず普段からそれを吹聴しているような人、は狙われやすいのです。

 このような周囲からの印象も、リストラが始まった後になっていきなり変えることはできません。よって知財部員は普段から、浮いた言動、周囲から危なっかしいと思われる行動は差し控える必要があります。

 

 世の中では、リストラがあると多くの会社員の雇用が危機に直面するかのように伝えられることがあります。しかし実際にリストラされる人はやはり全体の中で少数ですし、本当の意味で生活が成り立たなくなるなど、窮地に陥る人はさらに少ない人数と思われます。

 とは言うものの、必ず一定数、そのような人が出てしまうのも事実です。

 今回の記事が、コロナ禍で業績が悪化しそうな企業の知財部員の社内サバイバルの一助になれば幸いです。

 改めて、以下の点を意識してみて下さい。

 

<本日のまとめ>

1.発明者との関係を強化しておく

2.他メンバーの業務内容を把握しておく

3.グループの中で浮かないようにしておく

 

 本日は以上です。

 最後までお付き合い頂きありがとうございました。 

 

知財業務を希望する理工系新入社員が配属希望欄に書くべきこと

 皆さん、こんにちは。

 私は、通算でメーカーに約22年勤務の弁理士です。

 

 最近は、大学でも理工系の学生向けに知的財産関連の講義があるなど、世間一般的に知財に対する意識が高まってきたと感じています。そのせいか、新卒で知財業務を希望する若者も出始めており、知財部員としては嬉しい限りです。

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 一方、これまで知財部門は、主に研究開発部門からの異動で人員を賄っており、新卒の配属先としてはまだまだマイナーな部門であると思います。

 昨今、リストラなど将来に対する不安への備えとして、専門性を磨くことの重要性が盛んに喧伝されています。よってコアスキル早期形成の観点から、知財業務を希望する新人の方の多くが、配属希望欄に「知財部」と迷わず記載するかもしれません。

 しかし、実はこれは適切ではありません。

 私の20年以上のメーカー勤務の経験からすると、知財業務を希望する新入社員は、最初から知財部に行くべきではなく、研究開発や事業部の技術を希望し、そこで5、6年勤務後、知財部に異動するべきなのです。

 

 この理由は以下の3つです。

1.技術スキルを身につけやすい

2.社内で潰しがききやすい

3.発明者の立場が理解できる

 

 順番に詳細を説明していきます。

1.技術スキルを身につけやすい

 他の記事でも書きましたが、知財業務においてコアになるスキルは特許法や出願の実務知識など知財系スキルと、担当する技術分野の技術スキルです。前者は知財部門に行ってからも身につけることができますが、後者を後から身につけるのはかなり大変です。

 研究開発業務や事業部の技術担当を5、6年経験すると、当該担当した技術については一定の専門知識、業界知識を身につけられると思います。このような知識が知財部に異動した後も活きてくるのです。

 これは、事務所や調査会社などの知財サービス会社でも同じと推定します。つまり知財業務については入ってからいくらでも指導できます。しかし技術知識については深い経験を積ませることはできません。よってこれらを持った状態で入ってきて欲しい、事務所等のマネジメント層はそのように考えているのではないでしょうか。

 事実、ある事務所のメンバー紹介を見ていますと、結構な年齢まで大学等で研究者であった人を新規に採用したことが読み取れて驚いたことがあります。最近は大学にも知財担当を置くなど、大学教員も知財を意識しながら研究活動をしてきたと思われるので、その人の知財経験も相当なものであったのかもしれません。とは言え、こうまでして技術知識のある人が欲しいのか、と改めて研究開発経験の価値を認識したものでした。

 

2.社内で潰しがききやすい

 入社して実際に働き出すと、思い描いていた業務と違ってた、やっぱり別の部署に行きたいと思うようになった、こんな経験は誰もが持っていると思います。よって、知財業務が面白そうだと感じて希望通り知財部に配属になった新人が、やはり自分の理工系のバックグラウンドが活きるのはここ(知財部)ではない!などと思い直した、というのは十分あり得ることです。

 このように入社時の配属部署から別の部署に自分の希望で異動したくなった場合、研究開発や技術業務の方が、理工系の職種に広く移ることが可能で、場合によっては営業など文系職種でも歓迎され得ます。また入社後、色々な部署の様子を見たが、結局、入社時に思ってた通り、知財業務に就きたいと思った場合でも、このような職種からであれば社内で異動可能です。

 また転職の場合も、いきなり他社の知財部はさすがに難しいですが、事務所であれば転職できますし(もちろん年齢など他の制約はあると思われますが)、事務所で経験を積んだ後、企業知財部にさらに転職する道もあります。

 

3.発明者の立場が理解できる

 以前から強調している話ですが、これは本当に重要です。研究開発部門や技術部の人間が普段どんな業務を行なっているのか、その中で知財業務にかける時間はどのくらいか、どのような心持ちで知財部員と接しているか、これらは全て知財業務を円滑に行う上で重要、かつ経験しないとわかりません。

 1.では研究開発部門や技術部を先に経験しておくと技術スキルが身につくことがメリットと書きましたが、こちらの内容の方が本当は決定的かもしれません。知財部員が発明者と揉めているという状況は社内でよく見聞きします。その多くが、発明者の立場を理解せず、知財担当者が不用意な発言をしたことに端を発しているように見えます。

 発明者として自分が発案する側であったという経験は、出てきた案に対して謙虚であるべき、あるいは発明発掘や中間処理などでは自分も何らかの案や労力を提供しなければ価値にならない、など自らの立ち位置を知財部員に自然に理解させ、発明者とのコミュニケーション向上に貢献します。

 

<本日のまとめ>

 新卒のタイミングは、まだどんな部署にも配属され得る、キャリア上最も自由度が高い貴重な時期です。30代半ばを超え、若手というブランドが失くなった後では、なかなかこうは行きません。

 そのような重要な時期の配属先希望欄に、知財業務を希望する理工系新入社員はどう書けばいいのか、オススメは研究開発、もしくは事業部の技術です。

 

 それは以下の理由によります。

1.技術スキルを身につけやすい

2.社内で潰しがききやすい

3.発明者の立場が理解できる

 

 知財業務を希望する新卒の皆さんの今後のキャリアが充実したものになる一助になればと思います。

 本日は以上です。

メンバーのモチベーションを上げるために、知財部 管理職が語るべきこと

 知財部員の皆さん、こんにちは。

 私は、知財部で管理職歴3.5年の弁理士です。

 

 知財部で、一定期間マネジメントに従事すると、以下のような悩みを口にする社員が必ず出てきます。

「研究者が、非協力的で、僕らの業務が軽んじられてるようで・・・」

「他部署で働く同期に、特許なんて役に立ってるのか、と言われました」

 

 こんな時、マネージャーの立場としてはもちろん、「自信を持て!、我々の業務は、事業にこれだけ役に立っている」と、メンバーを鼓舞したいところです。

 一方、知財業務は、もしかの時の保険のような側面もあり、普段の業務は極めて地味なので、メンバーの士気を上げるためのエピソードなんて社内にはそうそうないし、どうすればいいのか?、そんな思いを抱いている知財部 管理職の方も多いのではないでしょうか?

 

 そこで今回は、周囲の部署からの冷ややかな反応をものともせず、知財部員にイキイキと仕事に取り組ませたい、モチベーションを上げたい、そんな時、知財部 管理職やリーダーがメンバーに語りかけるべき内容を提示したいと思います。

 

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 具体的には、以下の2つがあります。

 

1.特許がお金になることがある

2.特許による参入障壁で自社事業を守れている可能性がある

 

 順番に詳細を説明していきます。

 

1.特許がお金になることがある

 過去の記事でも書きましたが(知財部員の社内での地位向上 - 知財自在)、知財部は社内でその存在意義に疑問を呈されやすく、ともすれば冷ややかな目で見られがちです。その状況を打破するには、会社の利益に直接貢献する、すなわち単に特許を取るのみで終わらせず、ライセンスや特許権の売却など当該権利を活用することが重要です。

 これは最近の知財部ではどこでも言われていることと思います。よって社内にこのような例があり、かつそれを話せる状況であれば、社内でこんなライセンスに活用された、というエピソードをメンバーに紹介すればいいと思います。

 もしそのようなエピソードがなければ、以下のグーグルによるモトローラモビリティ買収の話はオススメです。

グーグルのモトローラ買収&売却をめぐる損得の皮算用 - ZDNet Japan

グーグルのモトローラ買収、目的は特許18件の獲得か--米報道 - CNET Japan

 上の記事にあるように、グーグルの自己申告の通り、モトローラモビリティの買収で得た特許の価値を55億ドル、買収の結果グーグルが取得した特許約2万4千5百件(2つの記事から、登録済特許約1万7千件、出願中のもの約7千5百件と思われるので、これらの合計をグーグルが取得した特許とした)を1ドル≒100円で計算すると、当該グーグルが取得した特許は1件あたり約2245万円となることが分かります。通常米国出願であれば1件あたりの権利取得・維持費用が200万〜300万くらいと思いますので、これを基準にすると、ざっくり7倍〜11倍くらいの値段がついたということです。

 多くの企業が、特許を十分活かしているとは言い難い状況ながら、多額の知財予算を確保して権利化を進めているのは、上記のように稀ではあるものの大きく化けることがある、という点が理由の1つではないでしょうか?

 もちろんこの例は、通信規格関連という最も権利活用が進んでいる、ある意味で特許活用の極北のような話なのでこんな値段がついている、というのはありますが、年単位の時間をかけて、研究者・知財担当者が苦労して取得した特許が7倍〜11倍の値段になる可能性がある、というのは何とも夢のある話だと思います。

 1社目の知財部で権利化に従事していた頃、上記のグーグルによる買収の話は仲間内で大きな話題になり、関連記事を読んでいた担当者の周りにみんなが集まってきたのを覚えています。それくらい、特許、すなわち自分達が日々従事している特許がお金になるかもしれない、という話はメンバーの士気を高めるのです。

 

2.特許による参入障壁で自社事業を守れている可能性がある

 これは特許の役割としてよく述べられている話です。しかし現実には、自分達が権利化に関与した特許がどの程度、自社事業に対する参入障壁になり他社を排除できたかを見える化するのは難しいです。定量的な算出はもちろん、定性的にもうまく証明できていないのが現状です。よって自分達の仕事が事業の役に立っている実感を持てていない知財部員も大勢いると思われます。

 上記の通り、自分達の周辺でこのような事例を探すことは難しいです。では、どうするか?、ごくたまにですが、当該企業自ら、他社の特許網によって新規参入が難しかったことをメディア等で吐露する場合がありますので、これをネタにするのがいいと思います。

 私が知っているのは、サントリーの幹部の発言です。一時話題になりましたが、ヘルシアで、花王が飲料分野に新規参入してきた際、以下の記事によると、サントリーも同様にメタボ対策飲料についてリサーチをかけたものの、花王の特許網に阻まれ、市場参入を断念したそうです。

「動的」知財マネジメントが円盤型市場を切り開く (2/2) - MONOist(モノイスト)

 知財部マネージャーは、上記のような例を示すことで、直接的に証明できないものの、自分達の業務が事業活動に貢献可能なものであることを説明し、メンバーの士気を高めることができるのです。

 

<本日のまとめ>

 知財業務そのものにメンバーが意義を見出すことができない場合(特に若いメンバーがこのような悩みを持つことが多いと思いますが)、管理職としてはこれらのメンバーのモチベーションを上げ、意欲的に業務に当たれるよう、対策を講じなければなりません。

 そのような時には、以下の内容を具体的なエピソードとともにメンバーに語りかけてもらえればと思います。

 

1.特許がお金になることがある

2.特許による参入障壁で自社事業を守れている可能性がある

 

 今日の内容は以上です。

 最後まで、お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

知財部員が直面しがちなキャリア上の危機とその解決方法

 私は、以下のような経験を持つ、企業知財部勤務の弁理士です。

 

・研究開発部門で経験があることを強みとして、意気揚々と自分で手を挙げて知財部に異動したところ、自分がやったことがある内容はごく一部で、他は全く未経験の技術領域が担当であることを上司から告げられ、途方にくれる。

・新しい技術内容にもようやく慣れたころ、ある研究者から「担当してくれてよかった」と言われて舞い上がっていたが、技術スキルではなく研究者に厳しく言わない点を評価されたと後で知り、愕然とする。

・知財担当者として事業部を跨ぐ異動をし、これまでと関連性のない技術の担当となった際、研究者から技術知識の無さを指摘され、舌打ちされる。

 

 今、思い出しても、当時の不甲斐なさが蘇り、冷や汗が出ることがあります(笑)。私は、周囲の人から「焦ってないように見える」「悩みがない」などと言われることがよくあったのですが、上記を経験していた時期は正直、精神的に大変でした。

 

 しかしよく考えると、自分にとってきつかった上記の経験の背景には、ある共通の原因があったことに気づきます。そう、それはこれまで経験のない新しい技術を担当することになった時など、他の人(主には研究者)が理解している内容を自分は理解していない、ストレートに言うと「落ちこぼれ」の状態になって挫折感を味わっている、と言うことです。

 

 企業知財部で勤務された経験のある方はご存知かと思いますが、知財部は、通常いくつかの研究Grに1人の知財担当者を置ける程度の人的リソースしかないため、場合によっては研究者数十人分の内容を1人で担当するケースも少なくありません。

 

 アサインされた研究内容の技術バックグラウンドが似ている場合はともかく、例えば装置開発Grなら、回路、プロセス、メカ、ソフトの研究者がいずれも同じGrの所属であったりします。そうすると、技術背景の異なるこれらすべての発明内容を理解しなければなりません。そもそもの自分のスキルレベルの問題もあったと思いますが、これは結構大変なことでした。

 

 一般的に日本企業では、多くの人が、入社以来、何回かの異動を経験することになると思います。また、より成長できる、あるいは条件のいい職場を求めて転職するのは当たり前と言われて久しくなりました。

 よって知財部員のキャリアにおいても、新しい業界での勤務や、未経験の技術内容を担当する機会があるのがむしろ一般的であると思います。

 そうすると上記私が経験したような状況は誰でも起こりうる、知財部員が直面しがちなキャリア上の危機と言っていいかもしれません。

 

 そこで今回は、知財部員が不幸にして上記のような状況に陥った際、どのようにしてその危機を乗り越えればいいか、その具体的な解決方法について、私の経験から言えることをお話ししたいと思います。

 

 意識すべきことは以下の3つです。

 

1.話ができる人を探す

2.どんな小さな分野でもいいので自分が貢献できる領域を探す

3.いったん退いて、再挑戦する

 

 1つずつ詳細を説明していきます。

 

1.話ができる人を探す

 自分の技術知識不足で発明内容をうまく把握できない時などは、ともすれば研究者全員が自分にとってのストレッサーであるかのように見えてしまいがちです。しかしそんな時こそ、よく周囲を見回すべきです。知財担当者の知財知識・経験を頼りにしてくれたり、快く技術内容を説明してくれるタイプの研究者も必ずいるはずです。焦って視野を狭くせず、ぜひ「このような人」を発明者側に探してください。首尾よく見つかったら、「このような人」を大事にしつつ、遠慮なく質問して自分の技術レベルをアップしましょう。最初は少し気が引けますが、短期間集中的にお世話になり技術的にキャッチアップすることで、結局、「このような人」に対しても早くいい結果を返すことができます。

 

2.どんな小さな分野でもいいので自分が貢献できる領域を探す

 特に発明発掘や中間処理などの出願系業務では、法律知識や知財実務知識よりも、技術知識の方がインパクトが大きいことがよくあります。このような時に、技術知識が不足していると十分な貢献をすることができずに落ち込んでしまいます。

 しかしここでもよく状況をみてください。事例は少ないものの、知財実務上のレアケースについて相談されたり、進歩性判断について質問されたりするケースもあるはずです。要は、自分が全く貢献できてない訳ではないことは認識していいと思います。

 またこのような場合、調査業務などに活路を見出すことも一つの手です。出願系知財部門であれば、調査業務はサブ業務と思われてしまいがちで、研究者自らも調査をすることを求めらるので、存在意義を出せないと思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。研究者が調査する場合、特許分類を使いこなしている人はそう多くいませんので、このような点にフォーカスすることで、技術知識に弱いところはあっても、例えばより漏れの少ない検索式を作成して貢献するなど、研究者に「居てほしい人」と思わせることは可能です。

 

3.いったん退いて、再挑戦する

 上記1.2.によっても、やはり状況は改善されずメンタル的にも辛いものがある場合は、いったん退却を考えるのもありです。すなわち当該技術分野の担当を一度離れる、もしくは状況によってはGrや部署を変わっても構いません。

 ある程度社会人としての常識があればできる仕事や、閑職にひとまず異動した上で、もし今まで担当していた、ついて行けなかった技術分野でのキャリアに相当のメリットがある(ライセンス活動が活発であったり、将来有望な技術で今理解を深めれば次に繋がるなど)のであれば、当該閑職をこなしつつ、オフに勉強して知識をつけた上で、もう一度再チャレンジすればいいと思います。

 正直、自分が悩んで居た頃は、体面などを気にしてなかなか閑職に退くことに抵抗がありました。しかし、今、同じ状況になれば、場合によっては年単位で暇な仕事につくことにも抵抗はありません。

 後になって経験したことですが、自分のスキルレベルに対して少し余力のある業務に就くことは、本当にメリットが大きいものです。精神的な余裕が生まれ、難易度の高い技術の習得にも挑戦しようという気になります。

 実は私にとっては今がそのような状況で、だからこそ前の記事(社会人が大学院に通うことを勧める理由 - 知財自在)に書いたように社会人大学院に通うなど、通常では続けることが難しい自己啓発にも取り組むことができていると思っています。

 

 以下、本日のまとめです。

 経験がない技術分野の知財担当になることは、大手企業の場合、一定の年齢以上になっても十分に起こりえることです。その時、周りの人は分かっているのに自分はわからない、すなわち「落ちこぼれ」の状態となり、かつて小学校や中学校で勉強がわからないと嘆いていた同級生の気持ちが初めてわかった、という人も少なくないと思います。

 このような時にどうすればいいか?、解決策として、ぜひ以下を試してみてください。

 

<本日のまとめ>

1.話ができる人を探す

2.どんな小さな分野でもいいので自分が貢献できる領域を探す

3.いったん退いて、再挑戦する

 

 以上です。

 

 

 

 

 

 

 

転職を考えている知財部員が候補企業を見る際のポイント

私は、40代前半の時、企業知財部に在籍しながら転職活動を進めた弁理士です。

 

振り返ると、当時は研究開発部門から知財部に異動して4,5年であったことから、まだまだ経験が浅く、知財業務自体を一括りに捉えていました。

すなわち転職候補の求人票を見る際も、研究所や事業部など現場の知財部と、本社の知財部を区別して考えていなかったり、ライセンスも出願も同じ知財業務なのだからそこから得られるスキルもそれほど変わらない、といった誤った認識を持っていました。

しかし自らも転職をしたり、他社知財部の方と交流する中で、転職を検討している知財部員が転職先(他社の知財部)について、事前にチェックしておいた方がいいと思える点がより見えてきました。

そこで、以前の記事(転職を考える知財部員が今の職場でやっておくべきこと - 知財自在)では今の職場でやっておくべきことを述べたのですが、今回は、転職する際に候補企業を見るべきポイントについて述べたいと思います。

 

本日の内容は、以下の3点です。

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

2.  ライセンス業務の機会があるか?

3.  どの程度、業務が分割されているか?

以下、詳細を説明します。

 

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

いわゆる大企業は、本社の知財部門(本社知財)以外に、各事業部・研究所にも知財担当者あるいは知財部門(現場知財)を置いている場合があります。

本社知財は本社の一部門になりますので、勤務地は都内など街中が多く、現場知財は、メーカーであれば、研究所や事業所のあるところになりますのでの田舎が多いです。

また業務でいうと、本社知財は、「戦略をやるんだ」といっている企業は多いです。戦略といえば聞こえはいいですが、それが具体的にはどんなものかは曖昧で、実質は管理業務のみ、すなわち代理人の評価や、全社統一の知財業務手順の策定などを行なっているところが多いと思われます。よって業務はそれほど大変でなく、残業も少ない、ワークライフバランスを取りやすい部門です。よって育児や介護などの事情を抱えている人にはいいのですが、実務スキルを身に付けたい若い人には、向かないように思えます。

一方、現場知財は、研究者や事業部の技術者が提出した発明案を権利化する、というのがメイン業務になります。よって発明発掘と出願、特許調査、中間処理など典型的な知財業務を一通り学べるのが最大のメリットです。特に事務所出身者は発明者と直接議論し合う機会が多くなる点に魅力を感じる人が多いようです。

勤務時間については、期末などの出願が集中する時期を除けば残業もそれほど多くなく自分の時間も確保しやすいと思います。この点は本社知財と大差ありません。一方、現場に近い分、発明者に対して嫌なこと(先行文献と差別化が難しく権利化断念、事業に貢献しないので年金支払い停止など)も直接言わなければならないなど、精神的にタフな状況がより多い点が懸念点です。

 

2.ライセンス業務の機会があるかないか?

 別の記事(知財部員の社内での地位向上 - 知財自在)でも書きましたが、ライセンス業務は稀少性が高い上、技術スキルもさることながら知財スキルの重要性も高く、知財部員が発明者と対等以上に活躍できる数少ない場面です。また活動の結果、他社からライセンス料を取れたとなると会社の利益に直接貢献しますし、自分たちが苦労して権利化した特許がお金になる手応えを感じ、知財部員、発明者とも大いに士気が上がります。

 このように実りの多い業務(とはいうものの、ライセンス料を取ってくるのは極めて難しいですが)なので、転職を考えるのであれば、ライセンス業務に関与できる知財部を選択すべきです。

 大企業の本社知財であればライセンス部門は必ずあると思います。ただし企業によってはライセンス業務は法務部門の仕事となり、知財部門は関与できなくなっている場合もありますので注意が必要です。

 また大手メーカー系列の知財関係会社も最近よく見かけますが、これらの会社のほとんどは出願・調査業務しかやっておらず、ライセンスは親会社の知財部門・法務部門が直接対応する場合が多いです。よってこれらの企業への転職もよく考える必要があります。

 

3. どの程度、業務が分割されているか?

 候補企業の中で、知財業務がどの程度細かく部門分けされているか?は、非常に重要な要素です。大まかに分けても、出願、調査、ライセンスと3つの部門があると思いますが、これら3つの業務は密接に関連し合っているので、各々の経験が別の業務に活きます。よってこれら全てを自分で担当できるところが望ましいです。

 比較的経験の浅い人であれば、中規模のメーカー知財はオススメです(中規模以下のところは知財部がないところが多い)。これらの企業では、知財部の規模も小さく人的リソースの余裕もないため、1人の知財部員が多くの役目をこなす必要があります。よってうまくいくと出願、調査、ライセンスの全てを経験する可能です。

 また大手企業であれば、業務単位でなく技術単位で担当者を配置する知財部があります。この場合も、特定の技術において、出願・調査・ライセンスと全ての経験ができる点が、業務単位で区切られた会社よりも恵まれていると思います。

 

<本日のまとめ>

本日は、転職を考える知財部員が、自分の市場価値をあげる業務経験を積める会社かどうか?の視点から、候補企業のチェックポイントとして、以下の3点をあげました。

 

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

2.  ライセンス業務の機会があるか?

3.  どの程度、業務が分割されているか?

 

特に若い人の場合は、年収も気になるとは思いますが、自分の将来にとって役に立つ経験が積めるか?という観点から、上記を意識して求人票チェック、面接での質問をしてもらえればと思います。

 

本日は以上です。